タヌキおやじの日々の生活 笠谷和比古「武士道と日本型能力主義」を読破!!     

笠谷和比古「武士道と日本型能力主義」を読破!!



目次
序章 武士道とは何か
第一章 赤穂事件と武士道
第二章 自立の思想としての武士道
第三章 武家屋敷駈込慣行
第四章 主君「押込」の慣行
第五章 日本型組織の源流としての「藩」
第六章 名君の条件―十八世紀の組織改革と指導者像
第七章 能力主義のダイナミズム
第八章 封建制度の日欧比較
第九章 日本型組織の過去・現在・未来
第十章 伝統文化とグローバリズム―新しい日本社会を求めて―
 現代においてさかんに議論されている能力主義についての本である。
 能力主義の対極にあるのが年功序列主義といってよいが、日本社会における年功序列主義がバブルの崩壊とともに守られなくなった今、少なくとも形式上は能力主義というものが取り入れられつつあるわけである。
 ところが、日本の歴史において、過去に日本の組織において取り入れられた能力主義があり、それを本書では、日本型能力主義と呼んでいる。
 この日本型能力主義の歴史というものは非常に興味深い。
 ほとんどが武家社会における能力主義について述べられているが、一部、商家における能力主義についても説明がなされており、これも興味深かった。
 ところで、戦国時代というのは日本の歴史において最も身分の流動が激しかった時代であり、その象徴が豊臣秀吉であり、下克上という言葉であったわけである。
 つまり、日本において能力主義が最も浸透していた時期だったと思われる。
 しかし、その後、平和になると身分が固定されるものの、次第に社会矛盾や社会問題が起こってきて、徳川吉宗による享保の改革が行われる。
 そこで、吉宗らは数々の政策を実行したり、問題を解決するために能力およびやる気のある人材を下級武士や外部から登用しなければならなかった。
 そのようなわけで、江戸期における能力主義というのは、享保の改革より始まったとされている。
 そのために採用された能力主義的昇進システムが「足高制(たしだかせい)」であった。
 身分の低い幕臣を高役職に登用する際に、その扶持米の差額を「足高(たしだか)」として、その役職の就任中にのみ支給するという制度であった。
 その次に行われたのが外部の血の導入であった。
 どういうことかというと、武士身分以外の者が御家人株を買って、幕臣になるというケースが出てきたのである。
 この御家人株の売買というのも、享保の改革時に解禁され、始まっているそうな。
 御家人という身分は、一代限りのものが多くあったので、売買という行為がしやすかったものと思われる。
 具体的には、養子相続の形をとったり、奉公を代行したり、俸禄米の一部を譲渡するという手段があったそうである。
 ちなみに、旗本身分の売買というのはなかったそうであるが、幕末の幕臣である勝海舟のように、御家人の株を買った家系の子孫が旗本の家の養子となるケースが数多く見受けられ、その多くが幕末の動乱時に活躍している。
 要するに、どんな時代もどんな国や組織でもそうであるが、国や組織を活性化させたい場合には、身分の低い人間を登用したり、外部から有能な人材を登用したりして、新しい血の導入をはかったりすることが基本であるのかと思う。
 また、これらのような人材登用の試みは他藩でも行われており、本書では、阿波藩、黒田藩、信州松代藩のケースなどが紹介されている。
 もうひとつ面白かったのが、藩の政治秩序と意思決定のシステムについての論考である。
 まず、大きく二つに上位決定型と下位決定主導型とに分類される。これは、トップダウンかボトムアップの違いということであると思う。
 管理人から見ると、日本では、戦国時代はトップダウン(上位決定型)が多かったのに対し、江戸時代からはボトムアップ形式(下位決定主導型)が多くなったように感じる。どちらがよいかは一長一短であろう。
 上位決定型は、親裁型と委任型に分類される。親裁型は、主君独裁型と君臣会議型に分類され、委任型は専任家老責任型と家老・重臣合議型に分類される。
 これらのタイプは、西欧でもかなり一般的なシステムなのではなかろうかと思う。
 しかし、西欧ではあまり一般的ではないと思われるのが下位決定主導型であり、これは、諮問-答申型と稟議型に分類される。
 稟議型の実例として、信州松代藩真田家が挙げられている。
 稟議とは、要するに各下級役人が具体的な判断を考えて、段々と上層上層に決裁を仰いでいく手法である。
 究極のボトムアップ形式といってよいと思う。
 管理人が推測するに、ボトム層で判断する裁量が多いために、ボトム層の能力が高くなければならないかも知れず、トップ層の労力が減るものの、常にトップ層が全体のバランスや戦略を考えなければならないかもしれない。
 最近、日本の社会においては、年功序列制から成果主義とか能力主義に転換しようとする動きがあるわけだが、外国の制度を取り入れるというだけでなく、過去の日本の能力主義を取り入れることも重要であると思う。
 過去の歴史上の能力主義というのは、日本人が自ら生み出した能力主義であって、日本人の国民性にフィットする可能性が高いわけであって、外国の能力主義を取り入れるより、むしろ、歴史上の日本の能力主義制度を現代風にアレンジして復活させる方がよいかもしれないと管理人は本書を読んで思った次第である。

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★★★☆☆75点

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