![]() | 破獄 (新潮文庫) (1986/12) 吉村 昭 商品詳細を見る |
久しぶりの吉村作品である。
吉村昭の作品は、面白そうなのは読み尽して、あとは、地味そうなのばかりだなあと思っていたが、これがなかなか面白かった。
題名通り、刑務所からの脱獄を扱ったドキュメンタリー小説である。
刑務所が舞台の作品は、吾輩も映画「ショーシャンクの空に」とか、「グリーンマイル」とかを観たことがある。
ショーシャンクは、傑作だった。
しかし、上記の映画は、フィクションだが、小説「破獄」は、ノンフィクションらしい。
ただし、登場人物の名前は、プライバシーの保護のために仮名にしてあるみたいだ。
あらすじはというと、強盗殺人を犯して無期刑囚となった佐久間清太郎は、昭和11年青森刑務所脱獄、昭和17年秋田刑務所脱獄、昭和19年網走刑務所脱獄、昭和22年札幌刑務所脱獄と、連続して脱獄を成功させる。
戦前、戦中、戦後の刑務所の歴史が書かれると共に、佐久間を脱獄させまいとする刑務所の看守と、脱獄しようとする佐久間の戦い、そして、佐久間が生涯を終えるまでが書かれている。
一回、脱獄して捕まれば、当然、脱獄犯に対する警戒は強くなって、前に脱獄したときより脱獄することが難しくなる訳である。
そのような中で、四回も脱獄するとは、世の中には超人と呼ばれる人はいるのだなあと改めて思った。
そのたび、そのたびに佐久間は看守たちの心理の裏をかいて脱獄をするのである。
そして、脱獄した後、うまく逃げ切るわけである。
しかし、どうしたことか、自首などでまた刑務所に戻ってくることになるわけである。
ともあれ、佐久間が、類まれな頭脳と体力をもっていたことは間違いないであろう。
惜しむらくは、佐久間は、その不幸な生い立ちのために、その超人的な才能を脱獄と脱獄した後に逃げ延びることにのみ集中してしまったことである。
また、戦中、戦後の刑務所内の食物事情や混乱、進駐軍の刑務所に対する措置についても書かれていた。
刑務所というのは、日本政府の行政機構の一部であるが、戦争直後は、一部、混乱もあったみたいだが、全体として、組織が有効に機能していたように思える。
広島では、原子爆弾が投下された何日か後には鉄道が走り始め、終戦の日には、全国できちんと鉄道が走っていたというようなことをどこかで読んだような気がするが、日本人の職業へのプロ意識がなせる業なのかなあとも思う。
トルコ、イタリアに行って思ったのは、トルコ、イタリアの人たちだったら、こんな場合、仕事なんてどうでもよくなりそうだ。。。。
おそらく、日本人の仕事へのプロ意識は、長所であり、短所でもあるのだろうと思う。
とにかく、すごく面白いです。
お薦めです。
自分の評価
★★★★☆80点
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